バイバイ。丸ちゃん

海にうち上がった大きな丸太は

重くてなかなか動かない

押しても引いてもびくともしない

 

だからずっとそこにいると思ってた

私が海を離れても

何年かしてまたここに訪れても

変わらずにずっと

 

でもそんな大きな丸太でも

寄せては返す

たくさんの波によって

ゆっくり、ゆっくりと

また海に近付いて

また大海原へ浮かんでいく

 

またここに来るのか

次はどこにいくのか

誰も知らない

 

忘れないけど

思い出さないよ

 

そう丸太に告げ

手をふって見送った

 

私の住む町では

もう二度と会うことはないから

もう探したりはしない

 

たくさんの波は

砂の凹凸を平らにするチカラもあって

ぽっかり空いた

丸太の跡も

マジックのように

もとに戻る

 

大きな波はたまに

小さな波もたまに

うち上がったり

引きずり込まれたり

削られたり

藻がついたり

 

能動的にはやってこないから

受け入れる大きな浜になるしかない

 

どの波が丸太を連れ去ったわけでもなく

たくさんの波

一つ一つは強くなくても

きっと連れ去ってくれるから

 

それでいいやと

送り出してあげればいい

 

気付かないなら

見送らなくてもいい

 

バイバイ

私。