彼の見ている世界を私は見ることができない

2週間ぶりに電話をした。

京都で会ってから初の通話。

京都で別行動になってからの私の話や、2週間であったことを心地よい合いの手で聞いてくれた。

 

優しくて綺麗な心から出てきた気持ちが、お腹や足や頭や喉を通ることで綺麗に濾されてから口に出てきたのだろうと思うほど角の取れた言葉に、彼が今まで歩んできた人生の険しさと豊かさが表れているように感じた。

 

彼は、私のような(まだ)凡人に時間を割いてもらうのは申し訳なくなるほど、素敵な人。

もっと彼を見習うために彼の全てを知らないといけないのに、彼は私の話を気持ちよく訊いてくれるからついつい私のことばかり話してしまう。

 

彼の過ごした2週間にネタ作りの時間があることを聞いた。

今まで、正直、お笑いのネタ「なんて」と思っていた。友人が芸人をやってて間近で見て手伝ってきたからである。いろいろ足りない部分があって、それでもそれが笑いとして許されてしまう状態を見てきた。友人なりの考えがあっただろうけど、こんなものかとだいぶ否定的に思っていた。そしてその友人をモノサシにして見てしまっていた。

 

彼のコントの筋書きは映画のようだった。映画好きな彼らしい捉え方だとおもった。

私も見てきたはずの日常の中から着想された非日常は、どう考えても自分には思い付かないような設定を教えてくれた。

一泡どころじゃないほどたくさんの泡を吹いた。こりゃやられたと思った。それほどに彼は新しい面白い世界をたくさん見つけることが上手で、彼の見ている世界を見ることはできないことを痛感した。

「彼の見てきた世界」と「私の見た気になっていた世界」は現実世界でも脳内世界でも重なっていたことはなかっただろうし、私が「彼の見ている世界」を見えるようになりたいと願っても、今からいくら努力しても見ることはできないように感じた。

 

喉から手が出るほど欲しい力なのに手を上げて降伏するのは私らしくないと思い、努力して近づくとしたらどのような力をつければ良いかを考えた。

1つのことに注力して見る観察力、他者に影響されずに自分の頭の中だけで考えられる思考力、考え続けられる集中力が、彼は長けていて、私には全く身に付けていない部分だと思う。

今までそんな力をつけようなんて思ったことなかった。人に合わせる方法や、一般的大多数の考え方に合わせる思考力を身に付けようとしてきた私にとって、真逆の力を身に付けようと思わないことは当然だった。

 

彼は奇を衒う人ではない。逆に人に合わせたり溶け込むのがとても上手で、世の全ての人から嫌われないタイプだ。

きっと、その溶け込んだ様子は周りから見れば「普通」で大多数派に見える部分なのだけれど、そんな溶け込める人を見つけようとすることは、色がある人よりも目立たないから、ウォーリーを探すよりも、気付いたら失くなってるヘアピンを探すよりも難しい。( )

 

私は「運」と「センサー」とその他諸々があるから、奇跡的に隠れた天才個性派を見つけ、関わることができる。と思っている。

 

私自体は天才個性は全くないのは自覚しているのだけれど、出会う凄い人を見極める目はあると思うし、凄い人を何かしらで支える力を日々訓練している。

 

(天才個性とは、勝手に身に付いている力のような意味ではなく、他人がその人程度に真似しなかった・できなかったものを指す。天才という言葉を不快に感じた人には申し訳ないが、きっとそんな人は人よりも秀でたものがある人だ。)

 

彼は私に似ている部分があると思っていたから、彼を近くに感じていたけど、指輪になっているダイヤモンドと鉱山の得体の知れない石のような差を感じた。まだまだ到底並ぶには及ばないし、加工を重ねても並ぶことができるかも分からない。

 

差が開きすぎていることがとても悔しくて、でも、そんな尊い存在と出会えたことが嬉しくて、見つけられた自分が誇らしい。

 

きっと誰にでも見つけられるものではない。様々な修行をしてきた私だからこそ、彼を見つけることができた。

私は彼に負担をかけさせても、彼や彼のような人を支え・アゲる人になるために、これからも彼からたくさんのものを吸収して、自分が納得する自分になっていきたい。

 

 

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ここまで書いて気付いたことがある。

私には発想力はないけど、実行力がある。逆に、実行力があるから、発想力がないと考えることもできる。

今までたくさんの面白いものと出会ってきたからこそ、見つけて体験してきたからこそ、新しい面白いことを思い付くことがなかったのだ。

だから私は負けているとかそういう訳ではない。のうのうと過ごしてきた訳ではない。違う方向に歩いてたからその道を通らなかったんだ。

私とは違う人が通ってきた私と違った道だから、自分も相手も認めて、純粋に素直に真っ直ぐ伸びていきたい。