イト

"イト"と"イト"が重なりあい

終盤に差し掛かったジェンガのように

不規則に積み上げられた互いのイトを

一つ一つ取り除いていく。

儚く脆く繊細かつ滑稽なその様は

芸術とさえ錯覚する。

 

ただそれが楽しくて、

1秒でも長く、せめてもう少しだけは崩れないでいてほしいと願っているのに、

一番ぐらつく部分に手を伸ばしてしまう。

 

どうにか保ってるそのイトが

絡まってしまったら良いのにと思う反面、

私たちはハサミも持ってて

簡単に切れてしまうものだから

だからこそ絡まらないように、

慎重に慎重に織りあわせてく。

 

その人は80℃のお湯。

美味しいお濃茶を作るにはぴったりの人だから、

風味も味も落とさず甘くて苦くて美味しいお濃茶が作れそう。

80℃を維持する気苦労に少し心配になってしまうけど、だからこそ美味しいお濃茶が飲める。

維持できるだけ維持してもらおうとか思ってる私は、どこまでも強欲で自分主義。

 

美味しいお濃茶できたら、飲み差しで君にも分けてあげるよ

 

苦くて顔が歪んでも。