みずでふくらむ着衣水泳

専念の恋が冷めたすきぴの話。

彼とはまだLINEを続けている。彼はいっつも不謹慎でどんな時でもやりたがるからちょっと困ってる。

会えないから過去のことを思い返して、欲求の捌け口として使われていたのかななんていまさら当たり前のことに傷ついたりもしたけど、私だってさんざん彼をストレスや寂しさの捌け口にしてきたな。なんて。

108円の恋なんて分かってたはずなのに。彼はちゃんと108円渡したら100円の恋と8円の愛というサービスを提供してくれた。

なんなら216円のときは216円分返してくれてた。

それなのに私は、それ以上のサービスを求めて苛立って悲しんで。もうすぐ終わるというか、自分から終わらせようとしている自分がいるのに、まだ都合よくサービスを提供させたいのに受け取れないことを不満に思う自分もいて嫌になる。

表面をこするような会話も、ずっと続けるとつるつるに磨かれていたんだなと、意味のないことが意味になった私たちだったから。どこにでもあるものがどこにもないものになる瞬間。

クリープハイプの歌詞ばっかりのエモエモな君はきっと私の紳士。分厚い仮面を息苦しくなっても着け続けようとしてくれた。嘘でもあり本当でもあり優しさでもあり非道さでもあった。たぶんスティッチと思った私は遠くなくて、悪の兵器として生まれた自分の本能と優しくありたい自分の心とがせめぎあいながら尖った爪や凶暴な牙や6つの手足が出てしまうのをグッと堪えて一緒に居ようとしてくれてたんだとおもう。

 

わかってたはずなのに。制御が大変な体で頑張ってくれてたのも、凶暴な一面があることも、彼は私の体以外にも好いてくれる部分はあることも、私も彼を都合よく利用してることも。