今日のハイネケンはいつもより苦くて
いつもよりっていうか、
まともにビールを飲んだことないけど、
すごくすごく苦くて
美味しかった。
彼を見つけるのにそんなに時間はいらなかった。
動きも服装も分かりやすいからすぐに分かった。
彼は手を伸ばせば届く距離にいた。
彼に声をかけたかった。
でも彼に声をかけなかった。
彼も私に声をかけなかった。
絶対に私に気づいていた。
お互いに気づいていたけど目を合わせなかった
いや、正確には彼は私に目を合わせてくれなかった。
私はずっと彼を見てた。
気づかないフリをされた。本当に気がつかなかったのかもしれない。でも、気づこうとしなかったことは間違いない。
彼は他の友だちがいた。他の人と楽しそうに話していた。
そんな悲しい夜でも
音楽は私を癒した。
私が初めて音楽ライブを味わった場所で
初めて見た人が、あの頃の曲を歌う。
一番好きな目当てのアーティストは
いつも通り、否、いつもよりすごく優しくて、想像を遥かに越してなだめてくれた。
私に微笑んでくれた。
私の望む笑顔で歌ってくれた。
失恋を経験した当の彼が好きなバンドは
私のためだけのセトリかと思うほど、
私がTwitterで呟いたものや、
今までこの日のライブのためにコツコツ聞いてきたたくさんの中でも特に私が好きな曲を私の目の前で披露してくれた。
前は曲がわからなくて
ノれなくて汗もかかなかったけど、
今回はすごくすごく楽しくて、
熱くなるほど踊り狂うことができた。
好きになった瞬間に、でも、このまま沼にハマると、彼は必ずこのアーティストのライブにいるため、必ず顔を合わせる苦しさを味わうことになる。
ラーメンでも食べて帰ろうかとおもったけど、このモヤモヤした甘酸っぱ苦くて辛いこの感情を大切にしておきたくて、まっすぐ自分の家までの電車に揺られている。
駅まで歩く道中、「あ~この感情はブログ行きだな~」なんて泣きながら呑気に思っていた。
お酒を飲んで、テキトーに繋がる男などに電話をかけて、失恋を慰めてもらって楽になりたい気持ちはある。
が、きっと家に帰っても、お酒は飲まず、
ちゃんとお風呂に入ると思う。おそらく。
泣くかなぁ。涙もでないかな。でも、わかってた。こうなるだろうとおもってた。でも、マスクの中のバッチリメイクした可愛い私を彼にみてもらいたかったなぁ。
彼には私の抱く感情が全くないことが
すごく腹立たしくて
悔しかったけど、
彼のクレイジーなノリはやっぱりちょっと好きだった。
もう自分から連絡しないよきっと。
向こうのめんどくさい対象になりたくないから。
いい思い出になったなぁ。
色のない今年を様々に彩る
素敵な人でした。
もう会えない。ライブに行けば見れるけど、きっと会いそうな物は行かない。行ったとしても、もう話すことも目を合わせることもないだろう。
ただ、一人で自分が好きなアーティストと対話をする。それだけ。一人で看板と自撮りして、その写真を誰に見せるわけでもなくswamに記録して、そそくさと帰る。
そんな今までのライブと変わらない参戦のしかたに戻る。
それがよかったじゃないか。
誰かと楽しむと好きなものが好きな人に吸いとられてしまう。ならば本当に好きなものは誰とも関わらず一人で楽しめばいいじゃないか。
なんてはげましてみても悲しさは消えないが、そんな私の全てを愛してる。
悲しみに包まれて眠るのも悪くない。