「乙女」になった。

京都へ行くことが決まってから、「夜は短し歩けよ乙女」の映画版を2回見た。

1回目は物語を知るため、2回目は登場した地名や飲食の名前を知るため。

 

物語の主人公は私のような活発で人懐っこい大学生だった。

充実した一夜の話。これを見て聖地巡礼したら、少しは時間潰しができるかなぁ程度に思っていた。

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1人で商店街を歩く。

趣のある映画館や2階の窓に変なマネキンが飾ってある名前の知らない商店街を歩いて京都らしくない散策をしていると余裕のある感じがして自分がオシャレ人間になった気分になる。

阿闍梨餅を見つけて、夜は短しで出てたから購入した。買った餅を撮影してると満月本店の店員さんが懐紙と空箱を貸してくださった。懐紙は折って渡してくれて、たった一枚の写真のためにそこまでしてくれることが嬉しかった。

そのあと、ろうろというお弁当屋さんに入った。靴を脱いで入ると店内は照明など空間が温かくオシャレで、お弁当と呼ばれるものはおばんざいのような京都感が強めなほっとするお昼ご飯だった。

 

下鴨神社へ行った。鴨川ホルモーみたいな神社だなぁと思った。(きっとそう)。水に浸すと文字が浮かんでくるおみくじの結果が散々で凹んだ。阿吽の獅子になんとなく心を惹かれた。その他いろんな分社に寄った。申餅はちっちゃくて400円なのは高いと思ったけど、名物と言うのだから仕方ないと思った。

 

鴨川を石に飛び乗りながら渡った。鴨川ホルモーの戦いみたいに変なポーズで写真を撮りたかったけど一人だったから遠慮しておいた。

 

彼に勧められた平安神社へ向かった。歩くにはだいぶ遠かったけど、普通観光地巡るとなったらそんなもんかと思って歩いた。ふーんと思って京セラ美術館へ。回りかたが分からなかったのと、なんとなく自分の心が動かない空気感を察知したので、適当に歩いて写真を撮って退散した。やっぱり私にはまだ美術館は早かったかぁ。若いなぁ。

 

今回の旅は京都という固定概念にあまり縛られたくないとおもっていたので、韓国のマカロンのお店に入った。抹茶オレとブルーベリーマカロンを頼んでお洒落な空間に腰を下ろす。こんなんで千円超えるのかとおもったけど写真映えする空間に酔えるなら安いものかとカップルに挟まれながら一息つく。味は美味しいというよりオシャレな味だった。

 

歩いていると日が沈み始めていて、月の真下にライトアップされた神社があった。絵のように都合よく配置されていたので、それをそのまま写真に収めた。ミニスカートのJK二人が写真を撮ってほしいと言うので応じた。通りがかりが撮ったにしては最高のアングルで撮れて、彼女らが喜んだ姿に私も嬉しくなった。

 

先斗町へ着くと6時手前。カメラの電池がなくなって、数枚しか撮れなかったため、少し散策に集中した。裏路地水族館が意外と味があってツボだった。フラフラ歩いていると、「女性でも一人旅でも」と書かれた看板のbarを見つけて、私のことか?と思って入った。

中は「乙女」がおじさんにお友達パンチを喰らわせたところのbarの内装と似た昔ながらの典型的なbarだった。ダンディーで明るいマスターが優しく迎えてくれた。お客さんはいなくて、マスターは2時間以上私に付き合って話をしてくれた。私のことを可愛いなんて言ってチャージ料だけでなくフルーツ盛りや、つまみ菓子もサービスしてくれた。マスターは実は凄い人らしくて、お店には有名人も来たことがあるという。お土産買ってないと言うと芸子さんの名前が入った団扇をお土産にとくれた。お酒は今まで味わったことないほど美味しかった。マスターに「次来るときはうちに泊まってもいいよ」って言われたから二人で写真を撮ってLINEを交換して「泊まれるように部屋を片しておいてくださいね」と約束をした。

4歳くらいの子供連れの夫婦が来店した。あまり話してなかったのに、帰ろうとするとお代を払ってくれると言ってくれた。申し訳ないながらもお言葉に甘えて、次会えたら是非お返しさせてと言って男の子に手を振った。

 

元々行ってみたかったmoon walkに行くことにした。道中、腰パンの男性に3人で一緒に飲みませんか?と誘われた。少し離れた所に2人いて、「3対1はキツいだろぉ」保険をかけてる感じがなんだか気分が乗らなかったし、moon walk行きたかったから断った。

moon walkは夜は短しのポスターがたくさん貼ってあったり内装は一面ちなんだ可愛い仕様になってたけど、学生だらけで混雑してて店員さんも忙しそうで居心地が悪かった。酒も美味しくは思えなくて、偽電気ブランとラタタタムだけ飲んですぐに退散した。

 

夜行バスまでの時間がまだあるなぁと思って、検索しておいたコンクリートバーなるものに向かった。

お店の前に行くとおへその見えるファンキーで小さなお姉さんが「ここの店今日やってないですよ」と声をかけてくれた。向かいのバナナジュースのお店で働くお姉さんだった。落ち込みながらオススメの店を聞くとお姉さんの知り合いに連絡してくれてお店まで案内してくれた。繁華街の奥のそのお店はすごく高そうで入りにくい店構えのお店だったけど、ファンキーなお姉さんの紹介だったので、若くて強面の店員さんもフランクに話してくれた。

そこにお客さんはいなくて、お兄さん二人が2時間ちかく私だけと話してくれた。こだわりの京都の抹茶オレを飲みながら置いているお酒の蘊蓄とかお兄さんがしてきた旅についてとかたくさん話した。「埼玉県から来たんです」と言うと、どこでしたっけ?と言われて驚いた。さらに、クレヨンしんちゃんをホーム画面にしていて集めたチョコエッグのフィギュアまで見せてくれたので、そこまで好きなのに埼玉県を知らないことにもう一度驚いた。ソーキの煮物を頼むとだいぶ時間がかかって、夜行バスに乗るための時間がギリギリになってしまった。最寄り駅から乗り場までを調べたら集合時間に間に合わなくなってしまってめっちゃ焦った。お兄さんたちに挨拶もまともに出来ずにそそくさと店を立ち去った。

 

どうにか間に合いそうな電車を見つけて先斗町を全力で走った。

三条京阪駅京阪本線三条駅とすぐちかくで、間違えて入ってしまい、急いでるのに駅員さんの呼び方も分からなくて泣きそうになった。呼び出しボタンに気付いてどうにか処理してもらって急いで三条京阪駅に行き、ギリギリで電車に乗ることができた。

バス停に到着したのは集合時間の2分前だった。

焦りと久しぶりの全力疾走に心臓がバクバクしたままバスに乗り込んだ。幸い隣に人はいなくて、寛ぎながら、お世話になった人たちにお礼のLINEをすることができた。

 

バスに乗ってからは長くて、最後にお話した人たちと写真を撮りたかったなぁとか、旅の思い出を振り返りながら、窮屈ながらも眠りについた。

朝起きて下敷きになっていた手が浮腫みすぎて鬱血のように紫になっていたけど、楽しんだ跡のような気がして悪い気はしなかった。

最寄り駅に母が車で迎えに来てくれて、ぬくぬくとおうちへ帰った。母は旅の話をたくさん聞いてくれた。

こたつで体を温めながら仮眠するとお昼になった。母はうどん屋に行こうと言って、車で20分くらいのよく行くうどん屋に行った。そのまま帰るのもなぁということになって、ノリで筑波山に行くことになった。このノリができるのは私の母しかいないと思う。笑

向かう道中、一人旅の話や旅のキッカケになったブレーキの彼の話をした。母は心地よく相槌を打ってくれて、思った以上にたくさん話してしまった。

山に着いてみると意外と何もなくて、ドライブスルーかのようにそのまま道を引き返した。道の駅を少し散策して、私の運転で帰ることになった。近所のスーパーでちょっと良いイチゴと日本酒とワインを買って家で宴会を開いた。これもまた楽しかった。

充実した1日がまた増えて、とても濃厚な4日間だった。

 

人にたくさん関われて、人の温かみを知れて、恋もできて一人になることも楽しめて、4日間スポットライトが当たってる気分だった。

もし過去の自分と話せるなら、日本中どこにも私の居場所がないと思っていた高校生までの自分に、微笑めばみんな微笑んでくれるよと言ってあげたい。

 

夜の長さもいつもより長かったのもあるけど、この数日全てを考えても、私は夜は短し歩けよ乙女の実写だった。

旅をする前はこの映画に対してなんの気持ちもなかったけど、今は私の一部としてとても思い入れが深い映画になった。