軽い

金曜。

泊まり。親御さんに緊張した。あまり乗り気じゃなかったけど、ゼミで先生と面談して将来のモチベーションが上がっていたから気分は悪くなかった。会ってからはそんなに嫌なこともなかったし、銭湯で一人でゆっくりできたし、無理のない日常のような時間の流れで感情に大きな動きはなかった。ふたりで入る布団は温かかった。

 

土曜。

布団に入るのが遅かったため、朝8時に起こされるのは少し不機嫌になったが、そんな不機嫌な私に不機嫌にならず、私のゆっくりとした起床準備に合わせてくれて、メイクをばっちりにしたかった私を許し、メイク後もかわいいと抱き締めてくれた彼の言動に機嫌を取り戻した。

パパさんに挨拶を済ませ、車に乗り込んだ。彼は、Bluetoothで私の携帯を車と接続してくれて、好きな音楽をかけていいと言ってくれた。今まで言われたことがなかったため、彼の配慮に驚いた。そして彼はコンビニで朝食を済ませようとコンビニへ車を走らせた。私がパンケーキ食べたいと言うと前に行こうと言っていたことを覚えてたんだと鼻で笑い、むさしの珈琲店に連れてってくれた。彼はモーニングを頼み、私はフルーツパンケーキを頼んだ。焼くのに15分程度かかるパンケーキは届くまで時間がかかり、パンケーキが提供される頃には彼のモーニングはほとんど食べ終わっていた。

パンケーキが机に置かれ、写真を撮り、宝石のようにキラキラと目を輝かせる私をみて、彼はふっと笑い、私に携帯のカメラを向けてくれた。泡のようなパンケーキをゆっくりと丁寧に口に運ぶ私を彼は幸せそうに写真におさめてくれた。急かすこともなく、まるで待っていないかのように、携帯を見ながら私が食べ終えるまで寛いでいてくれた。

食べ終わって店を出る。車に乗り込み、さあどこへ行こうか、榛名にでも行ってみるか。お昼は何にしよう、朝ごはん食べたばかりじゃんなんて笑いあって、彼は榛名湖へ連れていってくれた。道中はくねくねの山道だったため、酔いやすい私のためにカーブの前で減速したりして配慮してくれた。

榛名湖につき、霧のかかった幻想的な景色を撮影し終わるとロープウェイの頂上あたりから次第に青空が広がってきた。山が私たちを呼んでるみたいねなんて気を良くした私たちはロープウェイに乗ることにした。ゴンドラに乗り込むと子供連れとカップルが乗り込んできた。子供に一番の景色が見える場所を譲ってあげる彼にやっぱりいいなと思った。

降りると私たちは山頂へ向かった。Y字に分かれてる道で、頂上で会おう!なんてちょけた私に合わせて別の道を歩いてくれた彼に少し驚いた。頂上でお賽銭をいれ二人で手を合わせたが、神様に祈ることはなにもなかった。

戻ろうとして歩き出すと彼の電話がなり、暇になった私は、家族連れが写真を撮っていることに気付いて撮りましょうかと声をかけた。ありがたがって携帯を私に託し、写真を撮りたくない子供をこれを逃すと家族写真なくなっちゃうとあやす母を見て、私と母の幼少期を思い出した。

撮り終えるとお返しに私たちも撮ってくれた。これぞ記念撮影というような人に撮ってもらう写真に照れたような私たちの顔はいつもより少しよそ行きで可愛かった。

晴れ×紅葉した山脈はどこを撮っても絵になるもので、自撮りがとまらなかった。

下へ降りて車に乗り込むとお腹がすいた私たちは近くで何か食べようとなったが、榛名うどんという幟を見てわたしがうどんに反応した。彼は仕事場で十文字うどんというものを聞いたといって調べてくれた。目的地である草津からは遠いからと渋っていたが、私が行きたいと言うと連れてってくれた。

お肉屋さんの肉汁うどんなだけあって、肉が多めに入っていた。ゴボウがかんぴょうのように細くスライスされたかき揚げや、ネギなど具がたくさん入っていて、肝心の麺はモチモチのちぢれ麺で、何から何までわたしを喜ばせた。

おいしいねって笑いあって、彼が「今日やまもとの好きなものしかないじゃん」って言ったから思い返して私がすきなところばかりに連れてってくれてることに気付いた。

一つ一つでテンションが上がってまた次のところへだったため、気にして繋がりを見てこなかった私は、ここで彼の優しさに気付き、よりいっそう彼への気持ちが大きくなる。

食べたあと店の前にインスタ用の手持ちフレームがあったので彼に写真を撮ってもらい、草津方面へ。

コンビニに寄ってトイレに行って、軽くマッサージをしたら体がすこし軽くなったかもって喜んでくれた。マッサージが普段効かない彼からの感想は嬉しかった。車を走らせると雨が降ってきた。そして道の駅へ。足早にぐるっと回って宿へ行くことにした。

宿の人がなかなかでて来なかったときに、率先して躊躇わずに声をかけに中に入ってくれてうれしかった。

部屋に案内され私が彼をマッサージすると喜んでくれて私のほうまでふわっとした気持ちに包まれた。

宿の人はとても親切で晩御飯のために湯畑まで車で送迎してくれた。

湯畑つくと幻想的な空間が広がっていて私たちはたくさん写真を撮った。同じような景色で何枚も何枚も撮る私に痺れを切らさずに私が気が済むまで一緒に写ってくれた。

晩御飯は中華料理店に入り、彼はレタス入りチャーハン、私はラーメンを頼んだ。

食べ終わり、お風呂に入り、部屋に戻る。

髪を乾かし保湿剤をつけながら鼻歌を歌っている間に彼自身の携帯だけでなく私の携帯もWi-Fiを接続してくれていて手際のよさと優しさに感動した。

その後、幸せの欠片を共有し、そのまま私は眠りにつく。

彼もそのとなりで眠りについた。

と思っていた。

後で聞いて分かったことだが、彼は深夜3時頃に目を覚ましていたらしい。

二人分の携帯を充電して、ほどよい時間にアラームをセットしてくれていた。

 

日曜日。

朝起きておはようって微笑み合って、ダラダラと起きたふりをして、わたしを起こす。

私が起きてメイクアップしてる間、まただらだらとベットで携帯をいじりながらリラックスしている。

起きないのかよって少し恨めしく思うが、メイクを気が済むまでやれることに居心地のよさを感じる。

準備を終えて車へ乗り込み湯畑へ。

まずは温泉卵を二人で。じゃんけんで負けた方が奢ろうってゲームをしかけてくれた。

私はじゃんけんやあっち向いてほいなどのゲームが苦手でいつも後だしみたいになってしまう。勝負事は勝ちを意識してしまってどうもだめだ。いつものごとく後だしになってしまったので再戦を申し込み、私が勝っておごってもらった。

じゃんけん自体は慣れてないのもあり、得意ではないが、ゲームにして楽しませてくれるのが嬉しくて好きだ。

卵を食べ終え、私は隣の店であげまんじゅうを食べた。彼は美味しそうに頬張る私の写真を撮ってくれていた。散策して、彼がプリンを買おうとしたとき、わたしがじぃっとプリンの横にあったチーズ棒を見ていたのに気付き買ってくれた。無意識だったわたしは食べたかったものを見透かされて恥ずかしいような、私を分かってくれて嬉しい気持ちになった。

お腹一杯になったのでチャツボミゴケ公園へ。バスで穴地獄付近に行くと紅葉と苔がいいかんじすぎて彼の写真を撮ったり、撮ってもらったりした。

戻りのバスまで歩く道で私が平泉成のモノマネして?って言い、私もやってみようと声を出すと、死んだような音にならない声が「かぁぁ゛」って二人揃って同じ言葉が出てきて、顔を見合わせて笑った。

帰る方向に車を走らせる。ダムがすごくいい景色っていうと車を止めてくれた。二人で写真をとった。満足するとまた車を走らせ道の駅へ。彼はそばを丸呑みするかの早さで食べ、私はそれをみていた。五平餅を購入し、彼の運転する隣で食べた。

彼の町まで戻ってきて近くの運動公園へ。

駐車場に車を停めると猫が2匹。一匹彼にすごく懐いていてかわいいねって言って戯れ、もう一匹に私が木魚って名前をつけたらいいねって言ってくれて嬉しかった。

公園を歩きながらたまにの真面目な話。昔のはなしや彼に言えなかったことを話。手をつないでちゃんときいてくれる。寒くなってきてお互い薄着で震えてるのにこの空間から離れたくなくて、車に戻ってしまうと帰ることが暗示されるからなかなか動こうとはしなかった。

家に戻って私の忘れ物を取ってきてもらってお腹が減って、どこかで食べようってなって、前回会ったときに本当は焼き肉が行きたかったって話を打ち明けたのを聞いて焼き肉にしようって言ってくれた。

焼き肉キングに行って注文して、勢いよく食べる。彼のペースも彼の網に肉を入れる量も種類のバランスも注文する量もタイミングも全てが心地よかった。適当に並べられた「私が食べたい物」と「彼の食べたい物」。私の分でも彼の分でもない誰のものでもない肉を私たちは喰らっていった。

腹を満たすと心まで充たされた。彼への気持ちも高まり駅まで手を繋いだ。東小泉駅前で抱き合ってバカップルだねって笑いあって寂しさを持ち帰った。

家に着いてもLINEが来て、隣にいない寂しさはあったけど、旅が終わっていない嬉しさで充たされた。