最後の砦が辞めた話

入社して配属されたチームの最後の一人が辞めた。

デスゲームで言ったら私が勝利でゲームセットだ。

 

私は初期のチームが大好きだった。

上手くいかなくて泣いちゃう日もあったけど、優しく励まして笑いかけてくれるHさんがいて、面白おかしくいじっていじられて笑わせてくれるMさんがいて、分かるまで諦めずに細かくアドバイスをくれるmさんがいて、私よりもダメダメで全然上手くいってないのに何故か余裕そうな同期のEがいて。

 

特にMさんはアポが入らなくて焦って気分が落ち込んでるときに休憩に誘ってくれて話しにくい私とたくさん話してくれたり、ダメダメな私にでも分かるほど分かりやすくアドバイスくれたり、この人電話かかればアポくれそうだよってアツいかけ先くれたり、アポ全然入らないのキツいよなって一緒に落ち込んでくれたり、泣きそうなくらい落ち込む私にいち早く気付いて大丈夫かって声をかけてくれたり、本当に本当に今までたくさん支えてくれてた。

 

辞めると知ったのは辞める日の14時頃。

オススメのかけ先を急にたくさんLINEに送ってくれて、違和感を感じた。

「ありがとうございます。え、辞めないですよね?」そう言うとMさんは、「今日で辞めるよ~さらばだ~」なんて返されて。

急いでトイレに駆け込んだ。今まで誰かが辞めるとなってもこんなに泣いたことないのに、嗚咽するほど声を上げて泣いてしまった。

立て直して20時まで仕事して、そこからMさんに、「なんで言ってくれなかったんですか~今度ご飯行きましょうよぉ~」

なんて報告が遅いことを少し怒りながらご飯に行くアポをとりつけた。

 

そして昨日、そのご飯の日。

もう1人のチームメイトは少し薄情な人でご飯には行かないと言ってサシになった。

駅前で待ち合わせて店に入る。Mさんがよく行く大衆的な居酒屋。

カウンターに通されてビールとハイボールで乾杯。ぎこちないなりにお互いに無理して会話をする。座敷が空いたからと座敷に通されて職場の話や音楽の話たまに一緒に働いてた時のお礼や嬉しかったことの話仕事を辞めた経緯や何が嫌だったのかも教えてくれた。褒めるといやぁありがとうございますうと頭を掻くお決まりの照れ隠しは健在で本当に褒められ慣れてないんだなあと思う。それをされるとこっちまで恥ずかしくなるからそれ以上言えなくなる。そこそこに出ようかとなり、終わりかあと思ったら「もう一件いく?」と。三階まであるこれまた大衆的な居酒屋で私の職場の愚痴や恋愛について話す。すごくほろ酔いで気持ちよくなったときにラストオーダーがきて退店。

本当はチャリだったけど、電車で二人で帰る。降りるのどっち側かなんて聞かれてやっぱりMさんだなぁと思う。

これで仕事が終わったなんて言われるからひどーいなんて膨れてみたけど全然嫌じゃない。たぶんもう会えることはないけど、最後にちゃんと話しておいて良かったなぁと思った。

 

彼は心優しい人で、心が痛んで自社の製品を売れないと言う。心がある人には物が売れない世界だなあと思うと自分は何なんだろう、何をしてるんだろうとよくわからなくなってくる。優しい人になりたかったはずなのに今の私ってなんなんだろう。

 

Mさんはそれに気付いて出ていった。さあ私はこれに気付くべきなのかどうか。