わるものになれなかった横浜の話

30日、彼と別れた。

私の口から出たのは一番最低な別れ台詞だった。

「さっきタバコを吸いに行って戻ったら連絡つかなくなったから、そのままいなくなったらどうしようかと思った」

彼がその話をしたとき、"今だ。"と思い、その最低な台詞を吐き出した。

彼はそれを聞き返したあとビールを飲み、黙り込んだ。

 

未熟な私には彼を割り切ることができなかった。私の幼稚な我儘を私がどうすることも出来なかった。なのに私は合わないという言葉で突きつけた。ただ、私の不満が溜まっただけなのに。自分を正当化するように合わない理由をネチネチと羅列して。私がもっと早く相談してすり合わせようとすれば良かっただろ。腹を割ってぶつかって壁を乗り越えることから逃げただけだろ。たださみしいのが耐えられなかっただけだろ。言わなきゃ伝わらないと常々彼に言ってたのに一番言ってなかったのは私だっただろ。彼の首を絞めて自分の首も絞めていたのは誰でもなく私だった。

 

帰りの電車、桜木町から乗り換えを挟んで川崎まで話すことになったとき、尺が合わなくて彼が降りる間際、ギリギリで話を適当に切り上げて、じゃあ元気でね、なんて余っちゃって。

どこまでも割るものになれなかったなぁと、キリ悪く残った言葉と電車に揺られた。

 

何食わぬ顔で関係を継続する方法も、LINEで一言送って終わりにする方法もあった。

そうしていたら、こんな罪悪感で苦しい思いもしなくて済むし、一方的に自分が悪者になって終わらすことができた。

でも、彼との日々は、たかが携帯の1アプリごときで完結させるにはあまりにこってりしすぎていた。彼との8ヵ月は私の人生にとって大きなエピソードだったから、ちゃんと向き合いたいと思ったし、そうしなきゃダメだと思った。

 

救われたことも楽しかったことも思い返せばたくさんあって、それもこれも全部私の手で過去にしなきゃいけないのかと思うと胸が痛い。君は私が明日からすっきり生きていけるかと思ってるだろうけど、罪悪感とモヤモヤにずっとつきまとわれたまま進んでいかなきゃいけないんだ。YOASOBIの夜に駆けるが初めて深く刺さった。歌詞をまともに読み込んだことなかったし、意味がよくわからなかったけど、結構その通りの場面に遭遇してた気がして余計苦しくなった。なんてまた悪者になれない1つか。

私は彼を嫌いになった訳ではない。交際というだけで友達より期待が上がってしまい、そのハードルが重荷になっていただけだ。人間としてはとても良いなと思うところがいっぱいある。だから幸せであってほしいと心の底から思うし、彼にもし何かあったらできる範囲で助けになれればと思う。

 

でもこれは私が振ったように見えるけど、実質、振られてるのは私。彼は私を振ったんだよ。次は割り切れる人と出会おうね。